第49章 スタートライン!❥伊達政宗
その人はひとつ大きな笑みを浮かべて私に笑いかけた。
「ぜひ、貴方に作って欲しい反物があるからなんです。」
(え、私に作って欲しい反物...?)
その言葉にさらに私が首を傾げると、その反物屋さん、もとい、関原さんはゆっくりと話し始めた。
「一番最初から話すとですね....来月に大きな着物の展覧会があるのをご存知でしょうか?」
「え、そんなものがあるんですか...?」
「はい、それで展覧会で一番優秀と言われた作品には大きな褒美と素晴らしい反物が頂けるんです。」
(素晴らしい反物...?)
その展覧会に興味は惹かれたものの、その素晴らしい反物が何か分からない私はまたひとつ首を傾げる。
すると私の言いたいことが伝わったのかまたその人はにこりと笑った。
「素晴らしい反物というのはですね...西洋でいう、シルクという名の反物らしいのです。」
「!!」
(シルク....!)
聞き馴染みのある言葉に先程よりも大きく心臓が波打った。
(シルクといえば...,サテンの生地と組み合わせて作るウェディングドレスだよね...!そういえばここに来る前にも見たことあったな...)
そう頭に思い浮かぶのはかつての友人のウェディングドレス姿。
(あれ、ほんとに綺麗だったなぁ....)
そこまで思って次に思い浮かぶのは.....大好きな恋人の顔だった。
(....政宗もウェディングドレスなんか見たらきっと驚くだろうなぁ...)
政宗と、ウェディングドレス。
そのふたつから連想されるものといえば。
(...祝言...?)
流石にまだ早いとは思うものの、ウェディングドレスの話を聞いたらやっぱり憧れてしまう。
(いつか政宗とも挙げれる日が来るのかな。)
そう私が考え込んでいると。
「....ーい、おーい、華さーん!」
「!!」
その声で慌てて我にかえる。
はっと前を向くと困った笑い顔を浮かべた関原さんの姿があった。
(あ、私お話の途中で...!!)
「ようやく戻ってこられましたか、」
お話の途中なのに遮って考えごとをしてしまった自分を心の中で恨 んでぱっと頭を下げた。