第48章 縮まらない温度。❥真田幸村
「!!」
踵を返そうとした、その瞬間に手首を掴まれた。
驚いて振り返ると、顔を真っ赤に染めている幸村さんの顔が目に入る。
それでも何も考えられなかった私は思わず手を振りほどこうと手首に力を入れるも...
「...!!」
さらにぎゅっと力を入れられ、びくともしなくなった。
それにびっくりして幸村さんを見つめると....
「...俺の返事は、聞かないのかよ。」
と、呟いた。
「っ...!!?」
返事??返事????
どうせ断られるのにどうして返事が必要なの...??
純粋にそう思った私はぽつりと幸村さんに問いかける。
「....雪さんが、好きなんじゃないんですか...?」
「!!」
幸村さんが驚いた顔をする。
それに心がズキズキと痛んだ。
(...やっぱりそうなるよね)
その顔はどうして分かったんだ、と読み取れる...まるで図星と言っているようで。
思わず無意識に顔を歪めてしまった。
それを見た幸村さんははっと目を見開く。
そして手首を掴んでいた手を離した。
(...っ、これが答え。)
手首を掴まれて、引き止められて心の底で何を期待していたのだろうか。
結局、これが答えなんだ。
雪さんと幸村さんがくっつく。それが、運命なんだ。
そう思って唇を噛み締めたとき....
ぐっと離された手を掴まれたと思ったら。
その次の瞬間には、私は
幸村さんの腕の中に、いた。
「....!?!??」
厚い胸板の感触が直に伝わり、心臓の音も聞こえるほど、ぎゅっと抱きしめられていると気づいたのは、少し経ってからだった。
「....え、」
その状況に、思わず声が出ると....
「....お前が、何を勘違いしてるのかは知らねぇけど。俺が、俺が好きなのは....」
「お前だよ。華。」
「!?!?!??」
さらっと流れるように伝えられた言葉。
それは....
(え、好き?幸村さんが、私のことを?いや聞き間違い??ん?今の好きは誰に向かって...いやでも幸村さんは私の名前を...)