第48章 縮まらない温度。❥真田幸村
「さっきからお前は必死に笑ってるけどよ。お前の目はもうずっと泣きたいって言ってる。」
「っ....!」
泣きたい。そのとおりだった。
今すぐ帰って泣きたい。もう何も考えられないくらい。壊れたい。
でもそれが、そんなに出ていたなんて....
何も言えない私に幸村さんは悲しそうな顔を浮かべる。
「お前にとって俺は....悩みごとの一つも相談できないような奴なのかよっ....」
「!それは違います....!」
その台詞に、私は間髪入れずに応える。
幸村さんもその速さに目を丸くした。
「私は、幸村さんに何度も何度も救われました...!!幸村さんの言葉で心が楽になったときもありました...!」
(そんな貴方だからこそ。)
「好きになったんです...!!」
「!!」
「!?」
(....え。)
今、私なんて言った....?
幸村さんが目を見開いていくのをスローモーションのように見つめる。
(え、今、私、)
幸村さんのこと、好きって。
言わなかった...?
(....いやいやいや流石にそんなこと口が滑っても言えな....)
そう思って幸村さんを見ると、体が固まって、動けていない。
その様子に冷や汗がたらたらと流れた。
(....う、そ、いま、ほんとに私、好きって....)
私が言ったはずの言葉なのに私が一番把握できていない。
そして次にやってくるのは焦り。
(ど、ど、どうしよう、私幸村さんを困らせちゃう?困らせちゃうのかないや困らせちゃうよね幸村さんだけは困らせたくなかったのに!)
何も考えられない頭を必死に動かして口にひきつった笑みを浮かべる。
そして未だに動いていない幸村さんを見つめて早く立ち去ろうと口を開いた。
「あ、あの、い、今言ったことは忘れていただいて大丈夫です!!あ、あと私これから用事があるので...失礼します!」
早口で言いたいことを言ってこの状況を理解してきた頭を騙すようにさっさと踵を返そうとしたとき....
ぎゅっ