第48章 縮まらない温度。❥真田幸村
それが、今私がこうしてここにいる理由。
(っ、どうすればいいか、分からないっ...)
この胸の痛みをどうしたら抑えることができるのか分からない。
「嫌い、嫌いっ.....!!!」
(幸村さんのことなんて。)
「嫌い嫌い嫌い.....っ」
早く嫌いという感情で心の中を埋め尽くしたい。
幸村さんのことなんて考える隙間が無いくらい嫌いで埋め尽くしたい。
そうして、ふと私は明るい道路に目をやる。
すると仲の良さそうな男女がにこにこと笑いながら歩いているのが見えた。
(っ.....)
胸が、締め付けられる。
嫌いなんていう感情は、流される。
「幸村さんなんてっ...」
どれだけわめいても、どれだけ泣き叫んでも。
貴方はもう来ないと。手に入らないと分かっているのに。
どうしてもこの二人のように、あなたの隣を歩きたいと思ってしまうんです。
それがたとえ叶わなくても、辛い想いになったとしても。
変えられない。
止まれない。
「私は、どうしたら....っ」
そう、呟いた瞬間だった。
「華....?」
「...!!!!」
明るい方向から、ひとりの声が聞こえた。
その声を聞いた瞬間に体が震える。
その声の持ち主が誰か、一瞬で分かってしまったから。
名前なんて、呼びたくないのに。
呼んでしまう。
「....幸村、さん」
「...こんなところで何してるんだ?」
そこに現れた幸村さんは心底不思議そうな顔を浮かべて私の前に立った。
「....」
何も答えることができずに黙り込む。
それでも頭の中は大騒ぎだった。
(なんで幸村さんがここにいるの?雪さんのそばにいたんじゃないの?なんでここが分かったの?)
するとそんな私を見て幸村さんは目の前に手をそっと差し出す。
「?」
なんのことか分からずに首を傾げると。
「あー、何だ、なんか辛いことでもあったんだろ。今日の俺との約束にも来なかったし。取り敢えず立てよ。」
「!!」
約束。
その言葉を聞いて体中の血が騒ぎ出す。