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『イケメン戦国』永遠に紡ぐ恋ノウタ

第48章 縮まらない温度。❥真田幸村




その姿を見た雪さんは同じように顔を輝かせる。


「あ!幸村!」


(...え)


その呼称に驚いて思わず目を見開く。


(もう、幸村って呼び捨てで呼んでるの...?)


毎日話している私でさえそんな呼び捨てなんてしたことなかったのに。


すると幸村さんは私に向き直った。


「華、雪はこういう奴なんだ。だから仕事を分けてあげてくれないか。」


「っあ、はい...」


(幸村さんも...もう呼び捨てで呼んでる....)


私も今こそは呼び捨てで呼ばれているものの、少し前まではさん付けされていた。

でもそこで止まるわけにもいかず私も雪さんに向き直って、


「じゃあ、廊下拭きを...お願いします。」



「!ありがとうございます!!」



すると目を輝かせた雪さんがニコっと笑って廊下の方へと駆けだしていった。


「...何だか凄い子ですね。」

私がそう幸村さんに言う。


するといつものように返事が返ってくると思っていた。

だけど、今日は違った。



「...?」


いつまでも返事が返ってこない幸村さんをちらりと見ると...


「!!」



その瞳は、真っ直ぐ、雪さんが駆けて行った方へと向かっていた。

そしてその瞳の中に私の入る隙間など無いというように、雪さんが駆けて行ったあとの空中を写していた。



(....嘘)



それが、何を意味するのか。


理解したくなくて思わずそこで一礼して、幸村さんの前から立ち去った。

立ち去る間際に、幸村さんが気づいて名前を呼ぶ声がしたがそれも振り切って、とにかく廊下を走る。


そして廊下の隅まで来たとき....

ようやくほっと息をついた。


すると思い出したくないのに先程の光景がまざまざと目の裏に蘇る。


(...幸村さんは、雪さんに、惚れた?)



まさかあんな、一晩だけで?

横にいた私が声をかけても気づかないほど一目惚れしてしまったのだろうか。


そう思うと足ががくがくと震えていいようのない不安に襲われた。





(...幸村さんを取られてしまう。)





そんな、大きな不安が。






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