第48章 縮まらない温度。❥真田幸村
実は密かに私の目標として幸村さんと毎日話すことを掲げている。
最初の方はかなり怪訝に扱われたけど。
今となっては下の名前で呼んでもらえるほど仲良くなることが出来た。
だから、このまま距離を詰めて、もっともっと仲良くなりたい。
そうすればきっと幸村さんも私のことを意識してくれるはず。
そう信じて疑わなかった。
あの子が、来るまでは。
「....え、500年後から来た女の子?」
「うん、信じられないでしょ?でも本当の話なの!」
幸村さんと話した次の日に、女中のお友達からそんな話を聞いた。
「だから謙信様も信玄様も幸村様も佐助様もみーんな広間に集まってるんですって!」
(あぁ、だから今日はお話できなかったんだ...)
どうりで会えないと思っていた。
(...まぁでも私には関係ないしすぐに追い出される。)
そんな戯言を言う子なんてきっと誰も信じない。
そう、思っていたのに。
「あ、あの華さん!」
「...はい、何でしょう」
「私もお手伝いしたいんですけど、何かやることありますかね?」
(はぁ、また始まった...)
すぐに追い出されると思っていたその子は、何故かこのお城に住み着くようになった。
その子の名は『雪』という名前らしい。
私は心の中でため息をついて雪さんを見据えた。
「あの、本当に何もしなくてもよろしいんです。一応姫ということで扱われているので...」
そう、しかもこの子は姫という形で扱われていた。
何でかは分からない。
だけど上が決めたことには従うのが私達女中の仕事だった。
「っ、で、でも....」
まだ雪さんが渋ろうとしたとき。
「華。こいつはそういう奴なんだ。」
「!!」
後ろから見慣れた声が聞こえて慌てて振り返る。
すると笑みを浮かべた幸村さんの姿があった。