第48章 縮まらない温度。❥真田幸村
「あ、幸村さん!!」
ある日の温かい春の日。
私は大好きな人を見つけて手を上げた。
「!おー、華じゃねーか。仕事は終わったのか?」
「はいっ!幸村さんも終わったんですか?」
「おー。今から帰るとこだ。お前もおつかれ。」
そう言ってぽんと私の頭の上に手を乗せる幸村さんに幸せな気持ちが募って目を細める。
「よし、じゃーな、華」
「っ、はいっ!」
本当はまだ一緒にいたい。
そんな思いを必死に隠してにこりと笑う。
その笑顔を見せると幸村さんもにこっと笑って私に手を振りながら廊下を歩いていった。
「っ....」
幸村さんが行ってから。
私の心臓は先程とは打って変わってどくんどくんと大きく高鳴りだした。
(...幸村さん、ほんとに優しいなぁ)
そう。見てわかるとおり、私は幸村さんに恋をしていた。
といっても叶うことなんて望んでない。
なぜなら私は....
女中だから。
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私がこのお城にやってきたのは約一年前。
元々はお父さんがここに仕えていて、それにともなって私もこのお城で働くことになった。
そして初めてこのお城に来て、幸村さんの姿を見たとき、衝撃を受けた。
(こんなにカッコいい人、この世にいるの...??)
本気でそう思うほど私は幸村さんに一目惚れ、というものをしてしまったのだ。
もちろん謙信様や信玄様もなかなかの見た目なのだけど。
私にとっては幸村さんの姿が心の中に一番心の中に残った。
でも今となっては姿だけでなく。
その心の優しさ、綺麗さにも惚れてしまった。
そして、気づいたときには、もう戻れないほど、幸村さんに恋をしてしまっていたのだ。
(...よしっ、今日も話せた!)
どくどくと高鳴った心臓が落ち着いてきて、次の仕事場へと向かうときに私は心の中でそう思う。