第47章 愛してください2❥徳川家康
こうして今回だけ、今回だけ、と言い続けてもう何回目か自分でも分からない。
高月は授業態度や生活態度は至って普通なのに、何故か提出期限のある提出物だけはきちんと出した物がない。
(提出期限のない提出物は毎回ちゃんと出すのに。)
それでもこうやって受け入れてしまうのはきっと惚れているからだ。
教師が、生徒に恋する。
そんなこと漫画でしかなかったし、俺自身も空想の世界だと思っていた。
だけど。
一年のときに高月の担任になってからみるみるうちに自分が高月の虜になっていくのが分かった。
きらきらと弾ける笑顔に、誰にでも優しくする愛想の良さ。
それでもちゃんと自分を持っている高月に気づいたときにはもう引き返せないほど恋に落ちていた。
『徳川先生!』
と呼ばれるたびに心臓は高鳴り、緊張で汗が流れた。
それが恋だと認めるまでにかなりの時間を要したが、認めてからは重荷が無くなったように高月と接することができた。
(はぁ、俺も墜ちたものだな。)
こうやって高月の提出物は受け取るからもちろん他の生徒のものも受け取らなければならない。
いくらなんでもひいきはしない主義だ。
だから自分のデスクの上には出し忘れの生徒の提出物がこれでもかというほど積まれている。
俺はまた新たに預かった高月の提出物をぽんとその上に置くと、はぁ、とひとつ溜息をついて、次の授業に向かうべく足を進めた。
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(今日の授業の内容難しかったかな....)
俺は今日の分の授業を終えて自分の机の上に大量に積まれている提出物を確認しながら考えた。
社会の日本史、世界史を担当しているのだが、今は世界史の内容を中心に授業をしている。
だけどやっぱり日本史と違って世界史には苦手感情を抱く生徒も多く....今回の授業なんかはカタカナが多く出てきたことで皆ぽかーんとした顔で授業を受けていた。
どうしたものかと考えていると、ぽんと一つアイデアが出てくる。
(...補習でも開くか。)