第47章 愛してください2❥徳川家康
どこか、遠く離れた街で。
教師と生徒が結ばれたという話を風の噂で聞いた。
もう生徒は卒業して、今はその教師と結婚しているとかいないとか、そういう話も。
その二人は、どんな気持ちだったんだろう。
結ばれないはずの、いや、結ばれてはいけないはずの生徒と先生の関係。
その壁を二人はどうやって乗り越えたんだろう。
「徳川先生!」
そう憧れの眼差しで見てくるあの子にこんな気持ちを抱いてしまって。
きっとあの子にとっても迷惑だ。
そう分かっているのに。
止められない気持ちは加速すること"しか”知らなかった。
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「あ、いた徳川先生!!」
「!」
誰かの声に呼び止められて廊下を歩いていた足を止める。
そんな大きい声で俺の名前を呼ぶ生徒。
そんなの一人しかいないのだが。
「... 高月。」
俺がそう呼ぶとその声の持ち主はにこっと笑って俺に近づいてきた。
「先生に提出しなきゃいけないやつ、出そうと思ってたんだけど忘れちゃって....」
えへへ、と笑う生徒に口角が上がりそうになるもそこは教師としてしっかり顔を作る。
「高月....あんたこれで何回目??これの提出期限昨日だったよね?」
「うう、言い訳もないです...」
そうやって頭を垂れて俺の目を見ようとしない。
そんな子が。
俺の好きな子だった。
「っ....」
そんな風に落ち込まれると嫌なことをした気分になって俺は少し焦る。
そしてまたいつものように声をかけてしまうのだ。
「はぁ....今回だけだよ。」
「!!ほんとですか!?」
そう言って顔をぱぁぁぁあと明るくする高月にどくん、と心臓が一つ大きく高鳴る。
「うん。今回だけね。」
「わぁぁ、ありがとうございます!次はちゃんと出します!」
そう言ってにこっと笑う高月に顔が赤くなりそうなのを悟られないように後ろを向く。
「じゃあ、もう行って。」
「はいっ!ありがとうございました!」
ぱたぱたぱた....と高月の足音が聞こえなくなってようやく俺は息を付いた。