第5章 方程式のつくりかた❥明智光秀
(わあっ..!)
襖を開けて新しいお姫様が入ってきた。
鈴の鳴るような声とはまさにこの事だろう。
「初めてお目にかかります。香夜と言います。」
(この乱世にこんな綺麗な人いたんだ...)
その美貌は息を呑むほど美しい。鼻筋はすうっと通っており、唇も淡く赤で色づいている。少し切れ長の目は女の色気というものを醸し出しているかのようだ。
「この度は、私を匿って頂けるということで、誠に感謝いたします。」
「ああ。お前の父親と少し縁があったんだ。」
信長様が答える。
「一応紹介しておくが、この安土城の姫は華だ。」
信長様が私を見ながら言う。
「華...様。」
香夜さんが、私を見ながら呟く。
その私を見る目が一瞬冷ややかに細められた気がしたけど、香夜さんはすぐに深々と頭を下げた。
「たった数日ですが、どうぞよろしくお願い致します。華様。」
「わっ、私、様なんてつけられる身分じゃないから様なんてつけなくていいよ!」
香夜さんが困ったような顔で私を見る
「ですが...」
そこで光秀さんが口を挟む。
「華はそういう質なんだ。どうか名前で呼んでやれないか。」
香夜さんはそれを聞くと心底嬉しそうな顔をして、
「はい、分かりました!」
そしてわたしに向き直ると、
「よろしくお願いします、華さん。」
そう言ってニコっと笑った。
その顔はやはり誰もを惹きつける笑みだった。