第46章 愛してください❥織田信長
「!!」
完全に当てられたことに体が硬直する。
すると秀吉さんはまたひとつため息をついた。
「その様子じゃ、図星か。」
「っ....」
「どうした、誰に泣かされたんだ?」
「な、いてない。」
せめてもの小さい抵抗。
でもそんなものは秀吉さんには効かないと分かっていた。
「へぇ、こんなに目に涙をためてたのに泣いてないか。」
「いやそれはたまたまでっ...」
「人間はな、華。何かに感動したり、心が何かに突き動かされたしないと涙って出ないんだ。」
「っでも生理的に出る涙も、」
「お前のその状態が生理的に涙が出る状態なのか?」
「っ...」
完敗。
完璧に言い負かされて何も言えずに立ちすくむ。
すると秀吉さんが頭をぽんとひとつ撫でた。
「俺はお前のことが心配だから...話してほしいんだ。」
「っ、秀吉、さん。」
その温かい言い方にすべてを話してしまいそうになる。
でも、こんなみっともない話、誰に聞かせることができるのか。
「っ、ごめん秀吉さん。私は....言えない。」
そう言うと秀吉さんもついに黙り込んだ。
でも私から声をかけれるはずもなくそのまま変な時間が流れていく。
「.... 華」
その声にすっと顔を上げる。
すると、秀吉さんが両腕をこちらに伸ばしていた。
「...?」
その意図がつかめずに秀吉さんを見つめると.....
「来い。」
「!」
秀吉さんが一言だけ放つ。
(それって...)
その意味を瞬時に理解した私は今度は違う意味で立ちすくんだ。
その間も秀吉さんは優しい目線をこちらに向けている。
それに心もなんだかほぐされていくようだった。
(このまま秀吉さんに抱きしめてもらったら...少しは楽になるかな。)
織田先生のことも...忘れられるだろうか。
(もう、開放されたい。楽に...なりたい)
その思いが強くなる。
そして気づけば...私は秀吉さんの方へ歩きだしていた。
秀吉さんもにこっと表情を変えずに腕を伸ばす。
もう少しで秀吉さんの胸へ収まる....
その時だった。
「貴様。何をしている。」