第46章 愛してください❥織田信長
そうして私がもう一度踵を返そうとすると...
ぐんっ
「!?」
今度はさっきの力よりも大きく腕を引っ張られた。
驚いて後ろに倒れ込みそうになり、今度はちゃんと振り返る。
すると同時に秀吉さんの手が伸びて来て、
がっちりと顔を捕まえられた。
「!?」
秀吉さんに倒れ込むことは阻止できたものの、顔が秀吉さんの手に挟まれて全く動けない。
それでも未だに何が起こっているかわからない私を置いて秀吉さんはじっくりと私の顔を見つめる。
そこで私ははっと自分がすべき本来のことを思い出した。
(秀吉さんに泣き顔をバレないようにしないと...っ)
そう思って必死に手を振り払おうとするものの、その手は全く動かない。
「秀吉さん、離してっ....」
そう言うものの秀吉さんは私の声が聞こえていないかのように一言も喋らずに私の顔を観察するように見ている。
手を使って秀吉さんの手を解こうとしてもがっちりと捉えられた顔はぴくりとも動かなかった。
(っ、なんでこんな硬いのっ...?)
教師って実は隠れたところで肉体強化でもしているのだろうか。
そんなことを思っている間にも秀吉さんは今度は瞳をじっと見つめてくる。
その羞恥に耐えられなくなり、せめてもの抵抗として目を下に向けて瞳を隠すと...
「こら、目を隠すな。」
ようやく喋った秀吉さんはそう言って今度は顔ごとくいっと持ち上げられた。
「っえ...!」
いきなり近くなった距離に好きな人ではないとはいえ、心臓がどくどくと音を立てていく。
そして今度はちゃんと見終わったのか、ようやく先生が手を離した。
顔のホールドが取れたことにほっとして思わず秀吉さんを見つめ返す。
「ねぇ、秀吉さん、さっきの何だったの...?」
そう聞くと、秀吉さんは至極真面目そうな顔で私を見つめる。
そしてひとつのため息らしい息を一つついて、少しだけ間を置くと...
「お前、泣いてただろ。」
ばしっと、核心をついた。