第46章 愛してください❥織田信長
(私じゃ先生の一番にはなれないんだ)
走っているためか涙が横に流れていく。
(笑いかけてくれたのも、全部全部好意なんかじゃなかった....)
涙で目が滲みだした。
(先生には好きな人がいたんだっ...)
考えれば考えるほど胸が苦しく、冷たくなっていく。
それとともに大きな悲しみの感情が自分を襲う。
しかし、ほんの少しだけ残ったまともな自分がいた。
(闇雲に走ってても仕方ない、とりあえず下駄箱に行って、帰らないとっ....)
こんなみっともない姿誰であっても見られたくない。
そう思って走りながらも一瞬下を向いて涙を拭うと...
どんっ!
「!?」
何か大きなものにぶつかった。
気が動転していた私は慌ててそれから顔を離してその姿をちらっと見て確認する。
しかし逆光でそれが誰かは分からずそれでもその体の大きさから教師だとわかると私は必死に弁解し始めた。
こんな涙を、今は誰にも見られたくない。
「華...?」
下の名前で呼ばれても全員の教師が生徒を下の名前で呼ぶためそこでも誰かは分からない。
声も、誰の声が今の私には判別なんて出来なかった。
別のことで、頭が支配されていたから。
「っ、ごめんなさい!私ちゃんと前を見てなくて...」
頭を下げながら顔を見せないように下を向く。
「じゃあ、私はここで。失礼します!」
「おい、華。」
私が踵を返そうとするとその人が私の腕をぎゅっと捕まえた。
「!」
掴まれたことに驚きを隠せないものの、後ろを振り返ることはできない。
「おい、お前なんでそんな下向いてるんだ?」
(あ、この声は....秀吉さん、だ)
そこでようやくちゃんと聞こえてきた声に誰の声か分かる。
でも秀吉さんだからこそ心配はもっとかけたくなかった。
私は意を決してぐるん振り返ってにこっと笑みを作る。
「秀吉さん、ごめんね!ぶつかっちゃって!怪我はない?」
「え、あぁ、怪我はないが、お前....」
「うん、じゃあ良かった!私用事があるから!また明日ね!」
とにかく今は、泣きたい。
誰にも構わずに、泣きたかった。