第46章 愛してください❥織田信長

ふるふると体が小さく震えるのを感じた。


先生がさっき示した答え。

それは、肯定。


肯定とはつまり。




(あの子と、付き合う....)




「っ....」



その言葉を心の中で言うと口にも出していないのに心が張り裂けそうになった。


それと同時に視界も滲み始める。


そして負の感情がぐるぐると頭の中を回りだした。

諦めの感情ともにひとつため息をつく。


(あぁ。やっぱり私は先生の一番にはなれない....)



「本当にありがとうございます、先生！！」



「礼はいい。俺がそうしたかった。」



「！！」




そこまで考えて急に聞こえてきた声。

それは先程まで中にいたふたりの声だろう。


格段に大きく、近づいてきたのを感じて私は慌てて廊下の角まで走った。


(っ、ここで見つかったら本当に面目が潰れちゃう)


涙に濡れた顔なんて見せたくない。


だけど少しだけ気になってゆっくりと顔を出して二人の様子をうかがう。

すると女の子はにこにこと笑いながら先生を見上げていた。

こちらからでは先生の表情は見えず、その女の子の顔しか見えないがその子の顔からどれだけ喜んでいるのかが伝わった。


「本当に嬉しいです！次はいつになりますか？」


「そうだな、貴様の都合でいい。」



(え、もうデートの約束？)


聞こえてきた言葉に体が先程のようにかたかたと震えていく。

私がそこにいたかったという強い思いと私では織田先生は幸せになれないという複雑な思いが渦巻いていく。


そして少しだけ二人は会話をするとそれぞれ逆方向に向かって歩き出した。


先生がこちら側に身を翻したのを感じて慌てて身を隠す。


静かに息を殺しながら先生が通り過ぎるのを待った。

でもその間も....


無数の温かい雫が何個も私の頬を滑り落ちていた。


でも声を出してはいけないという条件で私は必死に口を抑えながら我慢する。



そしてようやく先生の姿と気配がなくなり...


そっと角から抜け出して、走り出した。

先生が来た方向とは、逆方向に。










走りながらも色んなことが頭の中をぐるぐると回っていく。

まるで走馬灯のように。