第45章 トドカナイオモイ『後編』❥豊臣秀吉
「お前は、俺に隠してること、ないか?」
「っ、」
その言葉に喉が詰まる。
(隠してること...あるよ。)
それは、私が秀吉さんのことを好きなこと。
だけどそれは言ってはいけない。
言ったら駄目なんだ。
私の言葉一つで、秀吉さんも、華ちゃんも傷つけることになるから。
それだけは、したくない。
そう思ってぐっと口を閉じると、秀吉さんはふっ、とひとつ息を吐いた。
そして何かの文を私の懐に忍ばせる。
「これはお前にだ。もし時間があったら読んでくれ。いつでもいい。」
(いつでもいいの....?)
そんなことを文に書くなんて秀吉さんらしくない、と思いつつも丁寧に文を入れ直す。
そして秀吉さんは私の頭にぽんっと手を置いた。
そして申し訳なさそうに笑う。
「今日は....ごめん。」
「っ....」
一瞬でなんのことか分かってしまった私は身体をこわばらせる。
そしてそれとともに、確信がついた。
やっぱり秀吉さんは華ちゃんのところに行っていたのだ。
華を慰めて、こんなふうに頭を撫でて。
二人の愛を深めたのだろう。
そう思うと、さらに胸がきゅっと苦しく狭くなった。
秀吉さんはそんな私に気づいたのか気づいていないのか分からないけど、そっと手を離して口を開いた。
「お前には凄い申し訳ないと思ってる。すまなかった。」
「っ、ううん、全然いいよ、気にしないで?」
必死に声を作って耐える。
「それに、もう夜も遅いし、また話は今度しよう?」
「...おう。」
秀吉さんは少しだけ不服そうな顔を見せたようにも見えたけれど、素直に身を翻して帰っていった。
ひとつも、振り返らずに。
私はようやく部屋に帰ってぺたりと座り込む。
そして秀吉さんから貰った文を読もうとするけれど....
悩んだ末に、それは棚の中に入れた。
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一年後。
私は一年前と変わらない生活を送っていた。
針子の仲間がいて、仕事もあって、充実した日々。
だけど、ひとつだけ変わった点があった。