第45章 トドカナイオモイ『後編』❥豊臣秀吉
そしてとうとう、祝言当日。
私は化粧も綺麗な白無垢も着せてもらって秀吉さんの隣を歩いていた。
この白無垢を秀吉さんに見せると綺麗だ、と言って笑った。
その顔にだって胸がときめく。
でももっともっと似合ってるのは秀吉さんだ。
正装だってきちんと着こなしている。
そんな秀吉さんを見てたらやっぱり私はつり合わないのかな、なんて思ったり。
それから、
準備が終わり、私達は会場に続く廊下を歩いていた。
どきどきと心臓が高鳴り、緊張にまみれておかしくなりそうなのを抑えながら隣の秀吉さんをちらりと見ると。
「?どうした?」
その視線に気づいた秀吉さんがにこっと笑って私を見た。
「っ...ううん、」
その優しい目線に心がきゅっと狭くなる。
私も同じように笑みを返した。
これから挙げる祝言が偽物じゃなかったらいいのに...。
と、何回思ったことだろう。
でも、そこである大事なことをひとつ思い出した。
(私から華ちゃんにこの祝言の話をしてないけど大丈夫なのかな...)
そういえば、華ちゃんはこの祝言の話をひとつも私に持ち出さなかった。
確かに私が悪いのもあるけど、何か思っているところがあるなら祝言の話を出してくるのではないだろうか。
(...まぁ秀吉さんだからちゃんと言ってるよね)
秀吉さんだとなんでも甘く見てしまう。
そう考え込んでいると...
「.... 華。」
「!」
不意に秀吉さんに名前を呼ばれた。
慌てて前を見るともう祝言の会場の襖の前だった。
「っあ...ごめん、すぐ入るね。」
そうして私が襖に手をかけようとすると...
ぱしっ
「!」
秀吉さんに手を取られた。
驚いて秀吉さんの方を見ると、真っ直ぐに見つめてくる鷲色の瞳。
「....お前は、大丈夫だ。」
「...え?」
「十分綺麗だ。だから胸を張れ。」
「っ...!」
私が緊張していたと分かられていた。
大丈夫だ、と言ってくれた秀吉さんにふわっと心が軽くなる。
そして今度は私が大きく頷いた。
「うん、大丈夫だよ。」
そんな私を見て安心したのかその瞳を細めると、一言、
「行こう。」
「うん。」
その合図で、私はその襖を開いた。