第44章 トドカナイオモイ『前編』❥豊臣秀吉
「!!華ちゃん...」
秀吉さんの 恋仲 の方の華ちゃんがこちらを見つめていた。
それに空気を読んだのか周りの針子の子たちはさっと離れていく。
「っ、あ....」
私は何も返す言葉がなく、ただ声ともつかない声を発すると。
すると、華ちゃんの表情がだんだん悲しげに歪むのが分かった。
「っどうしてっ... 華ちゃん....どうして私と立場が入れ替わってるのっ....」
「そ、れは....」
それにも何も答えることができない。
たとえその人が大名だと知っていなかったとしても、自分がやったことはここまで大きくなったのだと身に沁みて感じる。
(っ、でも....)
私が悪いわけではない。
しかも、秀吉さんもあの時に違う人だ、と否定してくれれば....
そう思った途端、華ちゃんが私の耳元にこそっと近寄った。
「.....貴方は、秀吉さんの恋仲じゃない。秀吉さんと恋仲なのは、私だよ。何を期待しているの?」
「っ....!?」
(き、たい...?私が、秀吉さんに....?)
私が言われた言葉に呆然と立ち尽くしていると。
さらに華ちゃんが追い打ちをかけた。
「ずっと思ってたことなんだけど.... 華ちゃんって、秀吉さんが自分に振り向いてくれるって、思ってたでしょ?」
「っ!?な、にを....」
「私は分かってたの。貴方が秀吉さんのことを好きなこと。だけど、もう遅かったね?」
「.....え」
「秀吉さんが好きなのは、貴方の名前じゃない。私の名前なの。」
「っ!!」
トドメのように言われた一言。
その言葉に心臓が嫌な音を立てていく。
そんな私には気にも留めないように、"恋仲"の方の華ちゃんは言いたいことを言い終わったように自分の持ち場へと戻った。
だけど...
私の心臓は、どく、どく、どく、と音を立てたまま。
そしてそのままずっと立ちすくむ。
前に足を出そうとしても、足が動かなかった。
(....秀吉さんが好きになったのは私じゃない。)
そんなの分かってる。
むしろ世界で一番私が理解している。