第44章 トドカナイオモイ『前編』❥豊臣秀吉
「ねぇ、華って秀吉さんと恋仲だったの!?」
「もう、そうなら早く言ってよ!」
「ほんと!私も秀吉さんとお付き合いしたかったわ!」
「え、え、え、え?」
いきなり浴びされる言葉に頭がついていかなくなる。
「あ、あの、一体どういう....」
私は秀吉さんと恋仲ではない。
秀吉さんと恋仲なのは私ではない方の、華、な筈なのだが...
「もー!なーにしらばっくれてんの!もう分かってるんだから!」
「そうそう!さっき大名様の話を盗み聞きしたのよ!」
「え、大名?盗み聞き??ど、どういうこと?」
その針子たちを落ち着かせて話を聞くと、先程この部屋の近くを歩いていた大名と、秀吉さんの声が聞こえてきたのだと言う。
その内容は...
「いやぁ、秀吉様は美しい姫を虜にしたのですなぁ。羨ましいです。貴方のような男前になりたかった者ですな。」
「いえいえ、そうでもないですが.... 華と会ったのですか?」
「はい。先程玄関でお会いしました。着物を抱えていらっしゃって...お名前を聞いたら華と名乗ったのですぐにわかりましたよ。」
「え、着物を抱えて、ですか....」
「はい、そうです。いやぁ本当に美しい姫を持たれたものですなぁ。」
「....」
というような会話だったらしい。
それを聞いて私は青ざめた。
(ま、待って。じゃあ今私は秀吉さんの恋仲ってことになってるってこと!?)
しかも、この会話の内容からして、秀吉さんもそのことを知っているらしい。それ加えて、私がぶつかったあの人は大名なのだと今知った。
それにも私は青ざめた。
(どうしよう、絶対秀吉さんに怒られる....お前適当なこと言うなよって今度こそ呆れられるかもしれない。)
これまで冷たい態度を取ってきた手前。
今更秀吉さんに合わせる顔など持ち合わせていないというのに。
どうするべきか。
そう考えていると....
「.... 華ちゃん。」
「!!」
誰かに後ろから声をかけられた。
その聞き覚えのある声に慌てて後ろを振り返ると。