第44章 トドカナイオモイ『前編』❥豊臣秀吉
ある、ぽかぽかの陽気の日のこと。
私はいつもどおりに針子のお届け物を渡しに行こうとしていた。
(うわぁ、急がないとっ..!)
その日のお届け物はいち早く来てと言われた着物。
私は安土城の玄関を飛び出した...
けど。
ちょうどそこに安土城に入ろうとしていた一人の人と思いっきりぶつかってしまったのだ。
どんっと鈍い音がしてその人にぶつかる。
「っきゃあ!....っ、ごめんなさい!」
私がすぐに顔を上げてその人の顔を見ると、如何にも優しそうな顔の男の人。
するとその男の人は私がぶつかってしまったのにも関わらず、にこにこと笑みを浮かべて言った。
「すみません、私の不注意でもありましたね。」
「っ、ほんとにごめんなさい!!」
私がおもいっきり頭を下げるとその人は慌てたように手を振った。
「いえいえ!謝ってほしかったわけではないのです。可愛いお嬢さん。貴方は華という方を知りませんか?」
その言葉に顔を上げて私は目を丸くする。
華、というのは私の名だ。
「え、華は私ですけど....?」
そう言うとその男の人は目を丸くして私を見つめた。
そして数秒後にこっと笑う。
「あぁ、あなたが華さんでしたか!やはり聞いていたとおり、お美しい方ですね。分かりました。すいません引き止めたりして。何かの御用事の途中だったのでしょう?」
「あ、いえ....はい。失礼します。」
その人が何に驚いたのか、そして急になぜ私を褒めたのかは分からないが私はふっと我にかえって着物を届けに街まで走った。
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「よし、なんとか間に合ったなぁ」
私が安土城についた頃にはもう日も高く昇っており、みんなが昼食の準備を始めているところだった。
そうして安土城の玄関に足を踏み入れるも...
何か中が騒がしくなっていた。
「....?どうしたんだろう」
そう思いながらもそこは素通りして針子部屋に入ると....
「!?!?」
針子の子たちが一斉に私を囲んできた。