第43章 愛が溢れる境界線❥伊達政宗
翌日。
俺は安土城に朝早くから出向いていた。
もちろん華を連れ戻すためだ。
最初は無理矢理にでも華の部屋に入ろうとしたが....やはりそれは受け付けないらしく、見張りの奴にかなり叱られた。
(....どうすんだよ、一体。)
華に会えないことで俺の不満はどんどん募っていく。
そして、あてもなく安土城の廊下を歩いていると...
「政宗。」
「!」
突然前方から威厳のある声が聞こえ、慌てて顔を上げると、紅い目を輝かせた安土城の城主が立っていた。
「っ、信長様...」
俺はすぐに頭を下げる。
だがそんなことはどうでもいいらしく、信長様は面倒くさそうに声を発した。
「いい。政宗。俺はそんなことを貴様にして欲しいわけではない。」
「!」
その声で俺は頭を上げる。
するとまた威厳のある声が俺の耳に入った。
「貴様。華はどうした。」
「....」
その言葉に何も答えることができずにただ黙り込む。
すると信長様はその紅い目を怪訝そうに細めた。
「どうしたのか、と聞いている。」
「.... 華は...」
「「.......」」
そこまで言うもののその先の言葉が出ずにまた黙り込む。
そのまま少しの間、沈黙が続いたあと...
ようやく口を開いたのは、俺ではなく信長様だった。
「...もういい。貴様には呆れたわ。愛している女の居場所さえ知らぬとは。」
そうして興味を失ったかのように身を翻す信長様。
「っっ...」
何か言い返したいが何も言い返せる言葉を持ち合わせていない。
信長様が背を向けて去っていく中、俺はその背中をただ見つめることしかできなかった。
「っ、華....」
信長様が去り、ひとりで華の名前を呼んだとき...
「そんなに華が好きか。」
「!!」
聞き覚えのある声が耳に入った。