第43章 愛が溢れる境界線❥伊達政宗
そして政宗は読んでいるときにある一部分に疑問を抱いた。
『政宗があんなに口づけが好きだったのに口づけをしてこないところから確信したよ。』
(確信...?何を...?)
その先が気になって文章を目で追うと。
『政宗が私のことを愛していないことを。』
「!!」
そこの部分を書くときは余程辛かったのだろう。
雫の跡がいくつもいくつもある。
(っくそっ...俺としたことが...)
華を愛していないわけがない。
むしろ好きすぎて困っているのに。
まさか華にこんな誤解を招かれるとは思っていなかった。
その先も、華の悲痛な心の叫びが聞き取れるような文章が並べられていた。
『政宗には幸せになって欲しいから。私はいなくなります。』
「あの、馬鹿っ....」
俺が華無しでどうやって幸せになるんだ。
俺にはお前しかいないようにお前には俺しかいない。
そんな馬鹿なことしてどうするんだよ。
そこまで思って政宗はふと考える。
(いや、でも一番馬鹿なのは....)
「華にこんな思いをさせた、俺か。」
華には幸せで、笑顔の絶えない人生にしてやると、一年前に決めたのに。
もしかしたら一緒に住んでいたことでそこの大切な部分が見えなくなっていたのかもしれない。
(あいつを連れ戻さないと。)
政宗はすぐに立ち上がって、自分の御殿から安土城へと駆けていった。
-------でも。
華は俺に会ってはくれなかった。
確かに華は安土城に逃げ込んでいた。
だが、俺が面会を頼んでも、今は一人にさせて欲しい、と女中から連絡があるだけ。
そのため、俺はこの日は諦めて御殿に帰ってきたのだ。
そして、今の状況に至る。
(俺はあいつのこと一番大切に想ってる。)
横が寂しい布団に横たわりながら思う。
明日は政務が無い日だ。
(そうだ、あいつを連れ出そうと思ってたんだっけ。)
もう一度誰もいない隣を横目で見てひとつ溜息をつくと、政宗は自分の意識を闇に落としていった。