第42章 甘い想いのジレンマ❥明智光秀

俺は何か反論をしようとしている華の声を無視してそのまま歩き出した。

華も暫く何かを言っていたが、無駄だと分かったのかようやく静かになった。


(まずは家康のところに軟膏を貰いに行かなければな。)


この手の酷さを治してからいじめてやらないと流石に可哀想だろう。


それに、華がいるときっと謹慎も愉しいものになる。


(それを華が受け入れれば、の話だけどな。)

光秀さんの側にはいません...！！と顔を赤くして言うかもしれない。

そうなったらそうなった話だ。仕方ない。


そう思っているうちに家康の部屋の前までつく。

そこでようやく腕の中の華が声を上げた。

「あの...光秀さん。どうして家康の部屋の前に？」

「決まっているだろう。お前の手を先に治す。」

「え....」


すぱっと言い切ると華は驚いたように目を見開いてこちらを見た。

(そんなに驚くようなことだったのか？)

そうは思うもののそれには深く追求せず、華を下ろす。

そして中の家康に声をかけた。


「おい、家康いるか？」

そう呼びかけると、


「....はい、いますけど。」


返ってきたのは無愛想な返事。

その返事にも慣れている俺は入るぞ、と声をかけて襖を開ける。


「....まだ入っていいとか言ってませんけど。」

家康が小さい声で何か言っていたがそれは無視して、華を前に出す。

すると家康も驚いた顔をした。


「華？どうしたの？」


(....)


あからさまに態度を変える家康にこいつも自分と同じ態度を抱いていることを悟る。

すると華もそっと手を家康に見せた。

「あの、手がこんなことになっちゃって....」

すると家康は目を見開いて華の手を取る。
そしてまじまじと見つめると今度は華を見た。

「あんたよくここまで放っておいておけたよね。こんなぼろぼろの手で何ができるって言うの？」

「う....そのとおりです....」


家康に怒られてしょぼくれる華。

その姿さえも可愛くてそっと微笑みを浮かべる。