第42章 甘い想いのジレンマ❥明智光秀
「まったくここまで放っておいたら炎症起こすかもしれないのに...」
ぶつぶつ言いながらも棚から軟膏を取り出して持ってくる家康。
それを華に差し出す。
「はい、これ塗っときなよ。一応手のあかぎれとかに効く薬草入ってるから。」
「わぁ、さすが家康だね!ありがとう!」
華も満面の笑みでそれを受け取る。
すると家康は分かりきったように顔を赤くしてそっぽを向いた。
「?どうしたの家康ー?」
それを不思議に思ったのか家康に声をかける華。
その様子を見ていた俺は面白くない感情を抱いていた。
(....何だか二人の空気になっているようだな。)
華の目には今完全に俺は映っていない。
家康の方も俺の事なんか忘れて、話している。
それが妙に腹立たしくて俺は華の腕をぐっと掴んだ。
「!?」
華が驚いてこちらを振り返る。
家康も驚いたようにこちらを見つめた。
だがその家康の方の目線は気にせずに華に問うた。
「もう軟膏は貰ったんだろう?」
「え、は、はい。貰いました、けど....」
華がたどたどしく答える。
そして俺はその返事を合図にぐっと華をまた横向きに抱き上げた。
「「!!」」
家康と華が同時に目を見開く。
俺は家康に向き合った。
「華に軟膏を渡してくれて助かった。礼を言う。」
「.....独占欲、ですか。」
家康は目線をしっかりと逸らさずに見つめてくる。
それを俺も受け取る。
腕の中の華だけが状況を理解していないようだった。
どれくらいそうしていただろうか。
俺も家康も負けじと鋭い目線を交わしていると...
「あ、あの、光秀、さん....?」
腕の中から小さな声が聞こえた。
「!」
思わず我にかえって華を見ると、意味が分からない、と言う顔で俺を見つめていた。
それに俺も気持ちがようやく冷め、家康を見据える。
「....今日はこれで終いだ。家康。」
「.....分かりました。」
俺がそう言うとひとつ頷く家康。