第42章 甘い想いのジレンマ❥明智光秀
「わ、分かりました!い、言います!だからこれ離してくださいっ」
「そうか。」
俺はぱっとかけていた手を離す。
そして華は必死に呼吸を整えていた。
そんなに強く掴んだつもりはなかったのだが。
俺がじっと華を見つめていると、華は瞳に慌てた色を写した。
「あの、ほんとに言わなきゃ....」
「言え。」
「ぅ....」
俺が言い切ると華は声を失くして、おとなしく隠していた両手を差し出した。
「光秀さんが、心配すると思って....」
「!!」
そうして差し出された手のひらは、赤切れでぼろぼろになっていた。
「お前...なんでここまで....」
そう言いながら華を見ると申し訳なさそうに眉を下げている。
「いつもお世話になってる針子の皆には綺麗な廊下を歩いてもらいたくて....こんなことになっちゃいました。」
そっとその手を包むと、いつものつるつるとした肌ではなく、ざらざらの肌が当たる。
それでも華は笑って言った。
「これくらいみんなの為ならどうってことないです!」
(っ....お前は....)
「...どうしてそんなに強いんだ。」
「?何か言いましたか?」
「いや、なんでもない。」
華の手をもう一度包み直す。
(....!)
そこでひとつ良いことを思いついた。
「おい、華。」
「?はい」
「これから俺に、看病されないか?」
「....え?」
「こんなぼろぼろの手では生活もままならないだろう?俺が看病してやろう。」
目を細めて華に投げかける。
すると華はさも焦ったように口を震わせた。
「い、いや、確かに水がしみることはありますけど、そこまでしなくても大丈夫ですよ....!」
「ほう、なるほど。快い返事感謝する。」
「え、え、ええ!?」
俺はそう言うと華をひょいっと抱き上げた。
「ちょ、光秀さん!?」
「華、これから針子の仕事はあるのか?」
「え、もう今日はないですけど....」
「なら決まりだな。」
「え、な、なにがっ....」