第42章 甘い想いのジレンマ❥明智光秀
華に会いたくていつもこの時間にいるだろう廊下を覗きに行く。
(....ふ、やはりな。)
針子部屋の前の廊下。
それが正午くらいになるとぴかぴかになっている。
それは、華のおかげだ。
毎日華はこうして廊下を磨いている。
きっと、俺だけしか知らないことだが。
今回も愛らしく必死に雑巾で廊下を擦っている。
(....なんて声をかけたら良いのだろうか。)
こうして頑張っているのを見るとそれを止めるのもどうかと思う。
(だが...頬を染める華を見るのもいいな。)
光秀さん!と頬を染めて言う華がありありと想像でき、無意識に頬が緩む。
よし、と意気込んでゆっくりと華に近づいていく。
そして俺は必死に雑巾で擦っている華の頭にぽんと手を置いた。
「華」
「!!」
名前を呼んでやると驚いたようにばっと華が振り返った。
「み、光秀さん!!」
すると予想通りに頬を染める華に心の中で笑う。
「廊下掃除はもう終わったか?」
「っ!」
俺がそう言うと華は慌てて雑巾を自分の後ろに隠した。
そんなことをしても、もともと分かっていたのに。
「なんだ、隠す必要があるのか?」
「いえ....なんでもないです、けど。」
(....なんだ。)
珍しく煮え切らない様子の華に眉を寄せる。
「....何かあったのか。」
「え?」
「何かあったのかと聞いている。」
「いや、何もない、ですけど....」
(...仕方ないな。)
またまた煮え切らない様子の華に俺は口を割らせることにした。
そっと華の顎に手をかける。
「っえ、」
華が驚いて目を丸くした。
だがどんどん距離を詰めていく。
そして、唇が触れ合いそうな距離で小さく囁いた。
「...何故そんな態度なのか言ってみろ。」
「っっ....」
めいいっぱい目をそらす華。
その姿さえも愛らしいが今はそんなことを言っている暇はない。
「.... 華。言え。」
もう一度低く囁くと、華は瞳を更に潤ませて叫んだ。