第42章 甘い想いのジレンマ❥明智光秀
華と別れて俺は早速天守へと向かった。
「信長様、光秀です」
そして俺は天守の中の人物に声をかけた。
「あぁ。入れ。」
するとすぐに威厳のある声が聞こえ、それと同時に襖を開けて天守に入る。
「信長様、何か御用ですか。」
その奥にいる人物へと声をかけて跪く。
すると信長様、と呼ばれた男は光秀をしっかりを見据えた。
「光秀。貴様に言いたいことがある。」
「...何でしょうか。」
その雰囲気に少し威圧を感じながらも答える。
そして2秒ほどの沈黙のあと、前にいる人物が口を開く音がした。
「....貴様に、謹慎を言い渡す。」
「...」
その言われた意味が分からず思わず前を向く。
「信長様、謹慎とは....一体なんでしょう。」
「そのままの意味だ。貴様に謹慎しろと言っている。」
「しかし、理由がないのでは....」
いきなりすぎる謹慎の言い渡しに少し戸惑う。
(何かしただろうか。)
謹慎に値するほどのことをした覚えがないが。
「....貴様。一つ聞くが、貴様が華を見つめているときの目を自分で分かっているか。」
「!」
はっきりと華の名前を出す信長様に更に意味がわからなくなる。
「目、とはどういう事でしょう。」
「はっ、分かっていないのならばいい。謹慎しろと言っている。話はこれだけだ。」
その内容を聞き出そうとするも信長様はそこで話を終わらせた。
それでもなお天守にいる俺に信長様は赤い目を向ける。
「話は終わりだ。明日一日は俺の前に姿を現すな。」
「....御意。」
信長様の瞳は俺が見抜けないものの一つだ。
このままこうしていても何も起こらないだろうと判断した俺は素早く引き下がった。
「....失礼しました。」
天守の襖を閉めて廊下を歩き出す。
(.....さて、どうしたもんかな。)
いきなり謹慎しろと言われても何もすることもない。
そしてそんなときに思い浮かんだのは...
(.... 華。)
華を一日御殿に呼んでもいいかもしれない。
どれだけたくさんの表情が見れるだろうか。
そう思うと少し心が浮き立つ。
そう考えている間に無意識に緩んだ頬に俺は気づかなかった。