第42章 甘い想いのジレンマ❥明智光秀
「光秀さん!」
そうやって笑顔で駆け寄ってくるあの子に。
俺は本音を、晒すことが出来るのだろうか。
俺が太陽を掴んでも、いいのだろうか。
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「光秀さん!」
俺の名前を呼びながら廊下を走ってくるその大きな声に俺は足を止めた。
目の前まで来たその声の持ち主はにこにこと笑いながら息を切らしている。
そんな姿にさえ愛おしさを感じた俺はそれを隠して話しかけた。
「どうした、そんなに走って。」
「いえ、光秀さんに伝えることがあって...!」
そう言ってにこっと笑うその小娘に心がぎゅっと掴まれた心地がした。
でもそれはひた隠しにしていつものように声をかける。
「そうか、そんなに俺に会いたかったのか?」
そう言って笑って口角をあげる。
すると小娘もいつものように顔を赤く染める。
「っっ....伝えたいことがあるって言ったじゃないですか!」
「だが俺に向かって走ってきたお前はいかにも嬉しそうだったがな?」
「っ....!」
(....おや。)
冗談のつもりだったが思ったより顔を赤く染めてこちらを精一杯睨んできた。
しかし俺がにやりと笑って頭を一つ撫でると、小娘....もとい、華がはっと我にかえった。
そして、
「また意地悪言ったんですか...!!」
と、今度は眉を引きつらせる。
「これで分からないようならまだまだだな。」
俺もいつものように返した。
「っ、こんなことが言いたいんじゃないです!信長様から伝言を預かってて.....」
「信長様から?」
俺はその言葉に瞬時に反応する。
最近はあまり厄介事は起こっていなかったはずだが。
何かあったのだろうか。
「は、はい。今すぐ天守に来いと....言ってました。」
「そうか...分かった。」
何だか名残惜しい気持ちで華の頭をもう一度ぽんと撫でる。
すると今度は嬉しそうに笑った。
「行ってらっしゃい、光秀さん」
「あぁ、行ってくる。」
そんな何気ない会話に温かいものを感じて俺は信長様のもとへと向かった。