第41章 伝えられない真実『後編』❥徳川家康
「なんだ、連れて行くって...」
俺はそこまで言ってはっとする。
俺にもとうとう、華のように上に行くときがきたのだと。
一瞬で悟った。
そして俺も華に笑いかける。
「あぁ。連れて行ってくれ。」
「うんっ!」
華はにこにこと笑って俺の手を取った。
そして、俺と華は羽根が生えたように、きらきらと何かに祝福されながら上へと上っていった。
その日の朝。
家康の様子を見に来たメイドが部屋をノックする。
「家康さーん、起きて下さーい」
こんな時間まで起きないのは珍しい。
「家康さーん、家康さーん?」
どれだけ呼びかけても起きてこない家康に不安を抱いてそっと部屋に入る。
「家康さん、入りますよー?」
そうして、入って、家康のベッドを見に行く。
すると...
「え、死んでるっ....!」
脈を測ろうとしたメイドがはっと気づく。
そして大慌てで城の人を呼びに行った。
一時間後...
家康の周りにはたくさんの城の人が集まっていた。
周りの人たちは皆悲しそうな声を上げて泣いている。
だけどその中のひとりが、ふと声を上げた。
「....家康さん、笑ってる。」
そう、家康は笑っていた。
死に際に似つかない、穏やかな笑みを浮かべて。
そう、まるで...
愛しい人に、会えたかのような。
嬉しそうな笑みを浮かべていた。
そして、そんな貧乏な娘と、ある庭園好きの男のお話が。
今の時代に、
伝説としてこの国に語り継がれていくことを、まだ誰も知らない。
終。