第41章 伝えられない真実『後編』❥徳川家康
そのはっきりとした声に俺ははっと目を開ける。
そしてすぐそばまで華が近寄ってきた。
『家康さん、私がいなくても、どうかひとりにならないで...』
「っ、最後までそれ言うのっ...?」
俺がそう言うと華はそっと俺の手を取る。
そして、
『愛してます。』
これまで見た中で一番美しいと思った笑顔を浮かべて、言った。
「...!!」
その声とともに、華の姿が見えなくなる。
そして体もいきなり軽くなった。
「っ、あ....」
哀しい、哀しい、哀しい...
それと同時にその感情が一気に押し寄せてきた。
「っ、うあっ、うわぁぁぁぁぁ....!」
溢れ出る涙。
それは棺桶の中の華に吸い込まれていく。
「華っ、華っ....!!」
もう完全にいなくなった華と、耳にしっかりとこびりついている華の声に。
もう何も考えられずに、ずっとそこで泣いていた。
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そんな話が、もう60年前。
(俺も年を取ったなぁ....)
夜も更けた頃に思う。
俺は晩年を城で過ごしていた。
あれから、華の言ったとおり、周りの人たちと絡むようにしていった。
最初は怪訝そうだった人たちも、いつしか笑顔で近寄るようになってくれていた。もちろん、挫折しかけたこともある。でもそのときに毎回思い出すのは、華の声と、笑顔だった。
(...もうそろそろ、華のところに行けるかな。)
今でも鮮明に思い出すことのできる華の顔。
それを頭に浮かべながらそっと庭園を見る。
するとそこに華の姿が見える気がして...
俺はふっとひとつ笑って、目を閉じた。
そして、朝。
そっと目を開けると...
「家康さん!」
「!」
目の前に、あの時からなんら変わっていない華の姿があった。
「!あんたどうしてここに....」
「へへっ、家康さんを迎えに来ました。」
そう言ってニッコリ笑う華。