第41章 伝えられない真実『後編』❥徳川家康
「華....なのか?」
声が震えながらも恐る恐る聞くと、声がまた聞こえてきた。
『はい、そうです、家康さん。』
それとともに、後ろから誰かに抱きしめられているような心地がした。
「な、んで...」
『家康さんが聞きたいことはたくさんあると思います。だけど...私はどうしても言いたいことがあったんです。』
「でも、華は目の前に...」
華を見ても何も変わらない。
『魂だけが、抜け出たんです。怖がらせるかもしれないけど、どうか伝えさせて。』
「っ、華....」
それが華かどうかの確信も得られないのに、今この時だけはこの声が華のものだと思った。
『まず貴方のことを置いて...先にいってしまってごめんなさい。』
「っ、ほんとに馬鹿...っなんで先に死んじゃうの、俺はあんたに見せたいものが...」
『わかってます。握らせてくれたお花、ですよね?』
「っ、うん、そうだよ、ちゃんと見せたいから、だから戻ってきてよ」
そう言うと空気がふるりと揺れた気がした。
『っ、ごめんなさい、家康さんっ...私はもう、そっちの世界に戻れない。』
「華っ...」
『魂だけだから、戻れないんです。そして私には時間がありません。だから、ひとつ、家康さんに伝えさせてください。』
「何...?」
『どうか、もう一人でいるのは辞めてください。私がいないから...あなたを一人にさせるのが怖い。』
「な、にいって...」
(現世にいなくてもなお、俺のことを心配するのか...?)
『私は、家康さんが優しいことを知ってます。家康さんがとても深い悲しみを抱えていたことも、ここに来て分かりました。』
「華...っ」
ただ名前を呼ぶことしか出来ない俺に華は優しく声をかける。
『私は...家康さんが好きで好きで、大好きなんです。あなたの優しさを、知っているから。』
「っ....」
『だからこそひとりにならないでください。きっとみんなも...貴方の優しさを、家康さんの優しさを、分かってくれるはずです。』