第41章 伝えられない真実『後編』❥徳川家康
「君はきっと大丈夫だ。」
「っ、はい。」
その声に押されてそっと棺桶の蓋を開けた。
「....!!!!」
そこに居たのは。
前あった姿と全く変わらない、華の姿。
まるで生きているかのような姿にどくんどくんと心臓が動く。
(華が...いる。)
「....」
何も言葉を発することのできない俺に助言するようにお爺さんは言った。
「血はもちろん全て洗い流したよ。だけど、ほら、生きているみたいだろう?」
「!」
お爺さんの声が歪む。
振り返ると、お爺さんの目も涙で潤んでいた。
「すまないっ...この子は、俺にとっても、大事な孫の様なものだったからな...」
「っ...いえ、」
その姿にまた視界が滲む。
以前の俺だったらこんなふうに他の人に感化されることはなかった。
そしてこういうふうに人の気持ちを理解することができるようになったのは...
「... 華。」
華の、おかげだ。
俺は棺桶のそばに跪く。
すると何の変哲もない華の姿がある。
「...」
震えながらそっと手を伸ばして頬に触れる。
「!」
冷たいと思っていた頬は、まだ温かさを残していた。
「華....っ....」
そこから動けずにただ名前を呼ぶ。
そして今度は、そっと自分の唇を華の真っ赤な唇に近づけた。
ちゅっ...
小さな音を立てて口づけをする。
唇にも、冷たさはない。
それに華が生きているのではないかと錯覚する。
「華っ....起きて、"家康さん"だよ」
「お願いっ....起きてっ.... 華っ...」
そうしていつものようににこっと微笑みかけてよ。
もし起きたら何でもしてあげる。
何でも叶えてあげる。
「だからっ、起きて、華.....」
そう言うと同時に華の頬にまた熱い雫が落ちた。
「俺はあんたのおかげで、生きてこれたんだよ....」
「あんたの心が、俺を変えたんだよっ....」
そこまで言って俺は手の中の花に気づく。
「これが、あんたに、一番見せたかったもの。」