第41章 伝えられない真実『後編』❥徳川家康
その人は一人で日向ぼっこをしているようだった。
俺はそっと近づいてとんとんと肩を叩く。
お爺さんがこちらを向いたところで声をかけた。
「すいません。お爺さん。 華っていう人、知りませんか?」
そう言った瞬間。
お爺さんの目が大きく見開かれた。
(え...)
まさかこんなに驚かれると思っていなかった俺は少したじろぐ。
するとお爺さんはぽつりと言葉を放った。
「そうか...お前さんじゃったか...」
(え...?)
言っている意味が分からずにお爺さんを見つめ返す。
するとお爺さんは我に帰ったように俺に話しかけた。
「あぁ、すまん、俺は華とよく接していたものだ。華はいつもお前さんの話をしていたのか...そうか....」
「あ、あの...」
一人で話すお爺さんに俺は一番聞きたかったことを聞く。
「華は今どこにいるんですか?俺は華に言いたいことがあったんです。」
そう言い切るとお爺さんは何故か悲しい色を目に宿した。
そして俺に向き合うと、はっきりと口を動かした。
「華は....亡くなったよ。」
「....は..?」
一瞬、言われていることの意味が理解できなかった。
死んだ?誰が?
華が?死んだの?
「な、に言って...」
頭を鈍器で殴られたような心地がした。
絞り出した言葉はお爺さんに届いていたかはわからない。
だがお爺さんは応えるように話し始めた。
「よく、聞いてくれ。華はな...ついこの間、亡くなったんだ。きっと、お前さんのところに行こうとしていたんだろう。足を滑らせて...地面に頭が当たって...そのままだ。」
「ど、ういう...」
頭がふらふらとして、何も受け付けないかのように目の前の景色が歪みだす。
「華が、死んだ...?」
死んだ?死んだ?
(何言ってるんだ、この人は。)
華は、死なない。
だって、俺があの花を見せるまで、死んじゃ駄目なんだ。