第41章 伝えられない真実『後編』❥徳川家康
(次に会って、花を見てもらったら、この城に住んでもらうのもありかもしれないな。)
俺はそんなことをふと思う。
華は俺に良い効果ばかりを与えてくれた。
あの子のおかげで人を恨むということも少なくなってきたし、自分のしてきたことにちゃんと向き合えるようになった。
少し短い間話していただけなのに、あの子が俺にもたらした影響はかなり大きかったのだ。
もしあの子が良いと言うならば、一緒に城に住むのもいいのかもしれない。
なんて。これまではしたことのない淡い妄想を抱きながら俺は深い夜を過ごした。
だけど。
(...さすがに、こなさすぎる。)
前あの子が来てからもうこれで半年くらいが経とうとしていた。
最初は色んな理由で自分の気持ちを押しやってきたけど...
もう、待てない。
俺は思い切ってあの子の村に行くことにした。
(行ってみないと何も分からないし。)
もしかしたらあの子はもう俺の庭園に来る必要はなくなっているかもしれない。
それでも。
俺はあの子に会いたかった。
そして、その日は、
初めて華と会ったような、月が光り輝いている晩だった。
今日は珍しく昼間にその子の村に行くことにした。
夜中に行ったところで誰も取り合ってくれないだろうと思ったからだ。
そしていつもは深くかぶるフードも、今日だけは取って歩く。
もしあの子に鉢合わせしてしまっても、こんな堂々とした姿なら分かられないだろうと思ったからだ。
いくら話したとはいえ、面と向かって流石にまだ恥ずかしい。
そんな思いからだった。
自分がいる館から西に歩いて20分ほど。
小さいけど活気づいている村。
それがあの子の住む村だった。
(よし、早速聞き込みするか。)
俺は村に入り、適当に目についた人に声をかけていく。
だけど...
「華?そんな人知らない」
「誰だその人?見当つかないなぁ」
「俺は知らねぇ、他を当たってくれ」
返されるのはそんな言葉ばかり。
(あまり周りの人と交流してなかったのか?)
いや、あの子の性格なら誰とでも仲良くしてそうだけどな...
そう思ったとき、視界に一人のお爺さんが映った。