第41章 伝えられない真実『後編』❥徳川家康
そのときは、次に絶対会えると。
信じて疑わなかった。
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(よしっ、と...)
完成した薔薇のような花を埋めてジョウロで水を注ぐ。
すると瞬く間に薔薇が成長し、綺麗に花を咲かせた。
(やっぱり、成長スピードも早い...)
あの子に見せるために、花が成長するスピードを五倍にする薬も入れて種を作ったのだ。
そして、棘がないのも、あの子が摘むときに手をぼろぼろにさせないため。
(....何だか、楽しみだ。)
俺は庭園いっぱいに咲き誇っているその花たちを見て優しい笑みを浮かべる。
あの子が、この花たちを見て何と言うか。
感激するだろうか。
綺麗、と言って笑うだろうか。
(いや、あの子ならもっと違う反応するかもな)
早く、あの子の反応が見たくて、俺はその日は夜に起きるために早く眠った。
しかし。
その日の夜はいくら待てどもあの子は来なかった。
庭園には光り輝くほど綺麗な薔薇たちが並んでいる。
それを横目に見ながら俺はひとつため息をついた。
(...今日は来ないか。)
まぁでも明日があるしな。
まだまだ時間はある。
そう思って俺はその日は諦めて部屋に帰った。
そして、それから幾晩も俺はひとりで過ごした。
目に入ってくるのはあの明るい笑顔ではなく。
朗らかな声でもなく。
俺を包み込む闇と、それと対照的に輝く月の光、それと花だけだった。
(....どうして来ないんだろう)
実は、前に華が来てから三ヶ月近くが経とうとしていた。
(もしかして、あの子の身に何かあったのかな)
そんなことを考える。
華の村ならこの前尾行したときにもう分かっていた。
一瞬、村に行こうかと考える。
(...いや、流石にそれは恩着せがましいか。)
わざわざ自分の村まで来て花を見てくれ、なんて言う男がいたら不審がられるかもしれない。
(...じゃあ、何か予定が?)
でもその可能性はかなり低い。
この前花を摘みに来たときだってぼろぼろの服を着ていたし、生活に困ってるという感じが駄々漏れだった。
予定が入っているとはかなり考えづらい。