第40章 伝えられない真実『前編』❥徳川家康
そして、そんなことをしているから、いつの間にか町の人にも避けられ、怖がられていた。
(別にどうでもいいけど。)
俺には庭園さえあればいい。
庭園さえあれば...俺は俺の帰る場所を見つけることができる。
そんなある日の話だった。
ここから、俺の運命が変わっていく。そんなことは露も知らずに。
そのときは刻一刻と迫っていたのだ。
「ふぅ....今日の分終わり。」
ある夜。
俺はいつもの庭園への水やりを終えてジョウロを片付けていた。
水を浴びて喜んでいる花たちを見るとまた気分が良くなる。
そうして、俺が部屋に入ろうとしたとき...
どんっ
「!」
庭園の方から大きな音がした。
慌てて庭園の方に走っていくと...
「!!」
女が一人、この庭園で何かをしていた。
それも、ぼろぼろのみすぼらしい服を着て。
(何してるんだ....?)
何か手元でごそごそとしている。
それをよくよく見ると。
(....!!俺の花たち!?)
その女は俺が育てた花たちをむしって鞄の中に詰めていた。
「おい!!何してるんだ!!」
俺が怒鳴ってその女に詰め寄る。
女はびくっと震えたが、急いで背を向けて庭園にある塀を登ろうとした。
(こいつ...ここから来たのか)
大好きな花を取られたことで平常心を失っていた俺はその女のフードをぐいっと掴んで引きずりおろした。
「っきゃっ...」
その女はびっくりしたのか鞄だけを塀の外に投げて引きずりおろされた。
「おい、お前何して.....」
ぐいっとその女のフードを取ると...
女は、カタカタと震えていた。
しかも、乞食のような、汚い服を着て。
しかし、そんなことよりも花を取られたことに怒りを覚えていた俺は、勢いに任せて怒鳴りつける。
「おい、何してるんだ!!ここは俺の庭園なんだ!!勝手に入って花を取るなんてどういうことか分かってるか!?」
「っ...」
その女は俺の言葉を聞くとぎゅっと唇を噛み締めた。
そして、手をぎゅっと握りしめる。
(ん?)
俺はその手を見て少し驚く。