第40章 伝えられない真実『前編』❥徳川家康
『家康!またこんなことして!!』
『ご、ごめんなさいお母様。』
あれは、6歳くらいの時だっただろうか。
俺はその時から、花というものに興味を持ち、育て始めていた。
だけど....
『もし次こんなことしたらあんたの花全部ちぎるから!』
『っ....ごめんなさい...』
いつもいつも、気がついたら怒鳴っていた母。
秘密で育てていた花たちも、その母によって踏み潰された。
(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい)
しかし、その時の俺に母に逆らう気持ちなどなく。
ただずっと母に謝り続ける日々が続いていた。
そしてその日々が続く中で。
俺は俺の中の何かが崩れていく、そんな感じがしていた。
『あんたなんか産まなきゃよかった!』
『あんたなんて要らない!』
『あんたってどうしてそんなに何も出来ないの!』
毎日毎日、そんな言葉ばかりを聞いていて。
そして15歳くらいだろうか。
気づいたときには母は亡くなっていた。
『そういえば病気になってるとか言ってたな...』
しかし亡くなっている母を見ても何も思わず、むしろ嬉しいとまでも思っていた。
そこから先はあまり覚えていない。
いつの間にか館を離れて城に住まわされて...
いつの間にか父もいなくなっていて...
いつの間にか一人になっていた。
そこまで思い出したところで俺は舌打ちをする。
(くそ、思い出すんじゃなかったな。)
また自分が虚しくなってくる。
たまに外に出たときに、親子が仲良くしているのを見ると無性に腹が立つ。
そういうときに気持ちを落ち着かせてくれるのが、庭園だった。
何故気持ちが落ち着くのかは分からない。
ただ、見ているだけで心の波が穏やかになるのだ。
(この庭園だけは、誰からも守る。)
俺はそう強く決意して、また庭園へと視線を戻した。