第39章 SWEET TALKER ❥豊臣秀吉
そうして秀吉さんに連れられて来たのは、縁側だった。
二人でそこに腰掛ける。
「わあ、今日は月が綺麗だね、」
そっと上を見上げると月が綺麗に輝いていた。
「...あぁ。」
(...あれ...)
私がそう言っても秀吉さんは気のない返事をするだけだ。
(どうしたんだろう)
そう思って口を開こうとすると...
「なぁ、華。」
「!」
ふいに秀吉さんが口を開いた。
「...お前は、さ。」
「....うん、」
「光秀のこと....好きなのか?」
「!」
秀吉さんの口から苦しそうに吐き出された言葉はそんな言葉だった。
「え、どうして....」
(私が好きなのは秀吉さんだよ、)
私がそう聞くと、
「お前のこと見てたら分かる。光秀の言葉で顔を赤らめたり、嬉しそうにしてたからな。」
「え、そんなこと...」
(秀吉さんにはそう見えてたの!?)
私が好きなのは貴方で。
これだけ想ってきてたのに、分かられていなかったらしい。
(秀吉さんにはばれてると思ってたのに...)
毎日のように甘い言葉をかけられてそのたびに顔が赤くなっていると自覚していたのに、秀吉さんには分かられていなかった。
(嬉しいのか悲しいのか分からないなぁ...)
そう思っていると、
「....やっぱり、そうか。」
「!」
私の沈黙を肯定と捉えたらしい。
秀吉さんは私にくるっと背を向けた。
「幸せになれよ。さ、戻るぞ。」
だけどその背中は何故か小さくなっていて...
「っ、ちょ、ちょっとまって!」
私は慌てて秀吉さんの手を掴んで止めた。
秀吉さんが驚いたように振り返る。
(気持ちを打ち明けるのは恥ずかしいけど....このまま誤解されるのも嫌。)
それに、きっと光秀さんはわざとああいう態度をとったのだ。
それなのに誤解されたまま返すなんて、絶対駄目だ。
「...ど、どうした?」
秀吉さんは私が止めたのに驚いたのか少し声がうわずっていた。
(っ、言わなきゃ、秀吉さんに。)
私のこの思いまるごと。
受け入れなくてもいい。
伝えるだけでもいいから。
届け。秀吉さんに。