第39章 SWEET TALKER ❥豊臣秀吉
「あの、ね、秀吉さん。」
ごくりと生唾を飲み込む。
そんな私を秀吉さんは黙って見つめている。
その沈黙に押さえるように私はそっと言葉を紡いだ。
「私が好きなのは...秀吉さんだよ。」
「!!」
秀吉さんが目を見開いた。
「私が想ってるのは....ずっとずっと前から、秀吉さんだけだよ。」
「っ....」
秀吉さんが更に息を詰めて....
「!!」
次の瞬間には私は秀吉さんの腕の中にいた。
そして秀吉さんの声が響く。
「っ、ひ、ひでよしさ....」
「....こんなつもりじゃ、無かったんだけどな。」
「え...」
私が声を上げると秀吉さんがそっと私の顔を上に向かせた。
「お前を影から応援して....見つめてるだけで良いと思ってたんだけどなぁ...こんなに好きになってるとは思わなかった。」
「....えっ、!?」
秀吉さんから紡ぎだされた言葉に信じられなくて今度は私が目を見開く番だった。
そんな私を見て秀吉さんは少し笑う。
「ふっ、信じられないか?」
「う、うん....」
(だって秀吉さんは皆に同じ態度を取っていたから。)
「でも俺だって気持ちを隠すのは大変だったんだぞ?」
「え....っ」
「お前を見つけて嬉しくて駆け寄ったあとに...お前を抱きしめたいって何回思ったか。」
「そ、そうなの...?」
「おう。でも今は...可愛いお前がこうして腕の中にいるからな。それで満足だ。」
「っ、秀吉さん....」
また甘い言葉を吐く秀吉さんに顔が赤く染まる。
「なぁ、これからは俺が華の事を守ってやる。だから...一緒にいてくれないか。」
秀吉さんがさらに私の体を強く抱きしめて。
それに押されるように私は返事を返した。
「っ....うんっ....!」
恋する健気な女の子が放った矢。
それはようやく、殺人成仁の男の的を撃ち落とした。
そしてその先にあるものは、
明るくて楽しい、二人の未来。
終。