第39章 SWEET TALKER ❥豊臣秀吉
(だから...ちゃんと我慢しなきゃ。)
恋仲でもないのに。そんな我儘なんて言ってられない。
(...じゃあ、恋仲だったら?)
「!」
私は今自分がそう思ったことに慌てて否定をする。
「そんなわけないよ、そんなわけないもん。なれるわけ、ない。」
ぎゅっと手を心臓のあたりに置くと、言い聞かせても止まらない本音が溢れてしまいそうだった。
(私...宴大丈夫かな)
秀吉さんと真面目に向かい合えるだろうか。
少しの不安を抱いて私は料理の準備を続行した。
その夜。
静まり返った安土の城下の中に立っているお城の中で
盛大な宴が開かれていた。
「では、乾杯だ。」
信長の一言で皆が椀を持ち上げる。
「今宵の宴も良いものになるように...思う存分楽しめ。」
その信長の一言で周りの男たちは一斉に歓声を上げた。
その楽しそうな中で....
一人ぽつんと座っている女がいた。
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(はぁ....。私どうやって秀吉さんと話そう。)
信長様の一言で宴が始まって。
皆思い思いに酌をされたりしたりで楽しそうに賑わっている。
もちろんその中には私の作った料理もあった。
だけど今私の頭の中は違うことで埋め尽くされている。
(秀吉さんに会ったら絶対に顔を赤くしないようにしなきゃ。顔が赤いのはお酒のせいとか言われたら恥ずかしいし...)
それにそもそも私は飲める方ではない。
そう思ってちょっぴりお酒に口をつけたとき...
「浮かない顔だな。」
「!」
ぱっと上を見上げるとよく知っている切れ目の銀髪の男が立っていた。
「あ、光秀さん...」
私がそっとその人の名前を呼ぶとその人はにやりと笑って私の隣に座る。
「どうした、何かあったか。」
口調こそは真面目なものの、顔に面白いことになっている、と書いてある。
「光秀さん...私何も話してないですけど。」
もう既に笑みが零れそうな光秀さんにジト目で問う。
すると光秀さんは今度は耐えきれないというように笑った。
「ふっ...お前がこんな顔をしているときは何かあった時と分かっているからな。」