第39章 SWEET TALKER ❥豊臣秀吉
「んー、なんかいい匂いするな。」
「!!」
そんな声とともに厨房にひょこっと顔を出したのは...
「秀吉さん...」
にこにこと私に向かって笑いかける、秀吉さんだった。
そして秀吉さんはこちらへと近づいてくる。
秀吉さんが一歩ずつ近づいてくるたびに心がドキドキと高鳴った。
「おー、華、今日の宴の飯か?」
「うん、そうだよ!」
秀吉さんのにこにこ顔につられて私も笑顔になる。
すると秀吉さんはめいいっぱいそこの空気を吸い込んだ。
「んーーっ、ほんとにいい匂いだな、宴が楽しみだ。」
そう言ってぽんと私の頭を撫でた。
「へへ、楽しみにしててね?」
秀吉さんと話せたことさえも嬉しくてにやにやと顔が緩むのを隠せない。
「あぁ、楽しみにしてる。ところで、華....」
「秀吉様!」
「「!」」
秀吉さんが何かを言いかけたところで三成くんが入ってきた。
「秀吉様、前回の謀反の大名のことで話が....あっ、」
三成くんは私の姿も確認すると慌てて身を引いた。
「すみません、華様とお話中とは思わなくて。」
「あ、いいよいいよ!」
私に気を使わせたかと慌てて手を顔の前で横に振る。
「いや、いいんだ。こっちこそ気まずくさせたな。」
秀吉さんも同じように三成くんに接した。
そしてもう一度私に向き直ると眉を下げて言った。
「すまない華。俺はもう行かないと駄目だ。」
「いいよ!私も今ご飯の準備中だったし!」
私が笑っていうと秀吉さんはまたぽんと私の頭に手を置いて、
「あぁ、ありがとう、じゃあまた宴でな。」
「うん、またあとで。」
「おお。」
そんな会話をしたあと、秀吉さんは三成くんと一緒に出ていった。
帰り際に三成くんが申し訳なさそうな顔をこちらに向けたけど私は笑って頷いた。
すると三成くんも安心したようで今度はちゃんと秀吉さんと向き合って厨房から出ていった。
何だか静かになってしまった厨房に一人佇む。
行ってほしくなかったといえば、行ってほしくなかった。
だけど私のせいで公務を邪魔するのはもっと嫌だった。