第39章 SWEET TALKER ❥豊臣秀吉
「今日はありがとう、政宗!」
つきっきりで料理を教えてもらって。
終わる頃にはもう夕方になっていた。
「あぁ。お前を教えるのには相当苦労したけどな。これでそこそこの料理は作れるだろ。」
政宗も肩を回してふーっと息を吐く。
「う...ご迷惑おかけしました...。」
でも政宗に付き添って貰ったおかげでそこそこの料理に対する知識は得られたし、実践もできた。
だから多分それなりの料理は出来るようになったと思う。
「まぁ、作れるようになったんだから結果としては良いだろ。」
政宗は笑顔を浮かべる。
「うん、本当にありがとう!」
「あぁ、お代は...口づけで十分だぞ?」
政宗がまた私の顔をのぞきこむ。
「っ、もー!政宗!また冗談でしょ!」
冗談と分かっていても政宗の綺麗な顔で言われるからかなり心臓に悪い。
「...本気、なんだけどな。」
そう思っているとまた政宗がぼそっと呟く。
「え...?なんて?」
それを聞き取れなかった私はまた聞き返した。
「いや、何でもない、じゃあまた明日な。」
政宗は今度こそというように手を上げると私に背を向けて立ち去って行った。
「...?」
(なんだか今日政宗変...?)
いつもと違う政宗に少しの疑問を抱いたものの、私も今度は同じように政宗に背を向けて歩き出した。
華が政宗に背を向けた頃。
先程まで華に料理を教えていた男が廊下を歩きながら、ひとつ言葉を洩らす。
「...俺じゃ駄目ってことか。」
しかしその呟きは誰にも聞かれることなく、静かな廊下へと吸い込まれていった。
「よし、これで終わりかな?」
私は目の前にある出汁をもう一度確認して蓋をした。
今日は信長様が突拍子に言い出した宴をすることになっていた。
(信長様は何でも急だよね...)
そうは思うものの、私は知っていた。
信長様が私が政宗に料理を教えてもらっていることを知って、それならば、と私の料理を味わう時間を作ってくれたこと。
先程兵士たちが話しているのを聞いて分かったのだ。
(ふふ、信長様も意外と優しんだよね)
そう思ったとき。