第39章 SWEET TALKER ❥豊臣秀吉
「おい、華!」
「!」
私はそこではっと目が覚めた。
さっきのことを思い出していたからだろうか。
手が止まってしまっていた。
「おい、しっかりしろよ?料理によそ見は禁物だぞ。」
そう言って私の顔をのぞきこんでくる政宗。
そう私は今...政宗に料理を習っていた。
秀吉さんに美味しいと思ってもらえるようなご飯を作る修行のようなものをしているのだ。
「はーい、ごめんなさい...」
よそ見をしたことを素直に謝る。
(そうだよ、今はこの料理をすることに集中しないと。)
そう思ったとき。
「お前、今何考えてたんだ?」
政宗がにやにやと私の顔をさっきよりも深く覗き込む。
「っ、何にもないよ...!」
私は慌てて顔を背けるも、政宗はそのにやにや顔をやめない。
「何だ、好きな人のことでも考えてたか?」
「っ...!」
図星で声が詰まる。
すると政宗は更に愉快そうに笑った。
「あー、そうかそうか。そーゆーことかー。」
「っ、政宗...!」
政宗になんだかお見通しされた気がして牽制するも政宗はもっとその綺麗な顔に笑顔を讃えて私を見た。
でも、次の瞬間に...
「それは誰だ?」
政宗がふいに真面目な顔になって聞いた。
「っ...?」
そのいつもは見ない顔に鼓動がどくっと鳴る。
だけど政宗はそのまま続けた。
「おまえの好きなやつって...誰なんだよ、華。」
「っ、まさ、むね...?」
その真っ直ぐに見つめてくる蒼色の瞳に何も言えなくなる。
「...」
私がその青に呑まれそうになったとき...
「はっ、何でもねぇよ、ちょっとはドキドキしたか?」
「!?」
いきなりさっきの真面目な色が政宗の顔から消えて、いつもの色に戻った。
「なっ、揶揄ったの!?」
「いーや?お前に好かれるやつは羨ましいと...思っただけだ。」
「え?」
最後の方が小さくて聞こえなかった。
私が聞き返しても政宗はもう一度何でもない、というと
「ほら、戻るぞ、まだまだ俺は厳しいからな!」
と、また前を向いて料理を再開した。
「...?うん」
何だったんだろう、と思いつつも、私もまた同じように料理に戻っていった。