第38章 大好きな君のトリセツ❥真田幸村
「その本で俺と喧嘩しないで済むんだろ?なんで駄目なんだよ」
幸村が不思議そうに聞く。
「だっ、駄目なものは駄目なの!」
これを見たときの幸村の反応が手に取るように分かって内心震えだす。
(絶対笑われて...お前何してんだって呆れられるかもしれないっ...)
これは私だけの幸村の取扱説明書にしようと思っていたのに。
そこまで思ったとき。
「別にいいじゃねーか、そんな本一冊くらい見せてくれたって。」
幸村が少し不満そうに言葉を放つ。
それに私は不覚にもむっときた。
(むっ...何よその言い方)
せっかく人がこうして必死になって喧嘩しないようにするために頑張っているのに。
そんなふうな言い方をしなくても良いんじゃないか。
「っ、そんな言い方し....」
私はそこまで言いかけてふと止めた。
(ここでまた喧嘩しちゃったら....このトリセツを作った意味がないよ...)
それに私だって喧嘩したくてしているわけでもない。
でも今は...何か幸村に喧嘩を売るようなことを言ってしまう気がする。
その危険を感じた私は早くその場から逃げ出そうと幸村に話しかける。
「あー、やっぱり、なんでもない。それより私は予定が出来たからっ...」
「え...おい、」
そう言ってすたすたと出ていく私に呆気にとられたのかそのまま立ちすくむ幸村。
でもそれは私には好都合だった。
今は幸村と向き合ったら絶対に喧嘩をしてしまうから。
(早く、行かないとっ...)
そして私は気分を冷ますために近くの川へと向かっていった。
トリセツを、自分の部屋に忘れていたことさえも忘れて。
(ふーー...かなり気分落ち着いたかな)
近くの川にそっと足をひたして15分ほど。
ようやく私は心の落ち着きを取り戻していた。
(馬鹿だよね、私。)
幸村の為を思って作っていたものなのに自分から喧嘩をしそうになるなんて。
「幸村....」
(今何してるかな...)
もしかしたら幸村のことだからなんかあいつ変だな、くらいに思ってすぐに部屋を出て行っちゃったのかもしれない。