第37章 五月雨と恋の天舞曲❥織田信長
とりあえず二人で安土城に帰って、縁側に二人とも足をかける。
「....それで、すごく、寂しくて....」
家康にこれまでの事の経緯を説明した。
すると家康はさっきまで黙って静かに私の話を聞いていたが、そっと口を開く。
「....なるほどね、つまり....信長様と喋りたいってことでしょ、?」
「うん、まぁそんな感じ...」
明らかに落胆しているであろう私の顔。
「....だからあんたにはそんな顔は似合わないって言ってるの。」
「んにゅ!?」
家康はそういうと思うと私のほっぺを両手でぎゅっと押した。
「あんたはいつものようにへらへら笑っとけばいいんだよ。それにそんな顔してると....俺が面白くない。」
「...へ?」
最後に付け足された小さい声が聞こえずに思わず聞き返す。
「ううん、何でもない」
だけど家康は何事も無かったかのように私の頬を離した。
その様子に少し不安を感じたけど....
次の一言でそんな感情が吹き飛んだ。
「....あんたのほっぺってもちもちだね、お餅みたい」
「!!」
(お餅!?)
「いっ、家康!太ってるってことが言いたかったの!?」
私は慌てて自分の頬を抑える。
「いや、別にそんなことはないんだけど...もちもちだなって、」
家康は真面目に語っている。
それが更に恥ずかしかった。
「うう、もちもちって分かってたならはやく離してよぉ...」
(めちゃくちゃ恥ずかしいっ...)
そんななか家康を見るといかにも真面目な顔で私を見つめている。
それが何だか面白くなって私はついふっと吹き出した。
「ふふ、何その顔...っ」
私はこんなに恥ずかしがっているのに家康だけ笑みの一つも讃えていない。
(対照的すぎじゃない?)
「ふふ、あははっ...」
家康の顔を見れば見るほど笑いが溢れてくる。
そんな私を見て家康は眉を少し潜めた。
「なに、俺の顔そんな面白い?」
言葉は冷たくてもその表情には優しいものがあって。
「ううんっ...私とっ家康の顔、真逆すぎるなって思ってっ...ふふっ....」
私が思ったままをいうと。
家康はようやく少し笑った。