第37章 五月雨と恋の天舞曲❥織田信長
お昼頃になると、私はいつもの調子を取り戻していた。
「ねぇ、聞いてよ昨日城下でね....」
「ええっ!本当!?それでどうなったの!?」
「あのね、それはね....」
「ほらそこ!お喋りしないで作業する!」
(ふふ...今日もみんな元気だなぁ)
私は針子部屋にお仕事をしに来ていた。
針子部屋の子たちは皆明るい性格で誰とでも仲良くなれる。
それもあってか針子部屋はいつもわいわいがやがやと楽しい。
お昼ご飯も針子のメンバーで食べるため寂しさを感じなくて済むのだ。
だからここにいる間だけは信長様の事を忘れられる。
ここにいる時だけが私の心の拠り所となっていた。
(さぁ、私もやらなくちゃ!)
針子部屋のリーダーに叱られて小さくなって黙々と作業を始めた皆を横目に見ながら私も気合を入れた。
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「はーい、皆、今日はここまで!お疲れ様!」
夕方の4時くらいだろうか、きらきらと輝いていた太陽が沈みかけてオレンジ色に染まってきた頃、リーダーの子が一つ大きな声をかけた。
それと同時にみんなが大きく背伸びをする。
「うわぁ、やっと終わったぁ...!」
「ほんと今日も長かったよねー!」
「うんうん、ねぇ、昼間の話の続き教えてよ!」
「あ、いいわよ、あのね....」
皆思い思いに仕事終わりの疲れを取っている。
(この反物だけは届けに行かなくちゃな...)
だけど私の仕事はまだ終わっていなかった。
目の前にある反物だけは今日中に届けてくれと頼まれたものだ。
(でも皆お仕事終わったし...私も休みたいんだけどなぁ...)
「...んー...行くか、」
少し迷った末に、やっぱり持っていくことに決めた。
こういうのは後回しにしたらもっと面倒くさくなるし第一依頼してくれた人に失礼だ。
(よし、行こう!)
私が意気込んで立ち上がると、後ろからみんなの声が聞こえる。
「あれ、華まだ残ってたのー?」
その声に私は笑顔で答える。
「うん、これで終わりだからちょっと行ってくるね!」
「はいはーい、針子部屋一応開けとくねー?」
「うん、ありがと!」
そんな会話を交して私は夕暮れの城下へと出た。