第37章 五月雨と恋の天舞曲❥織田信長
「え、また、ですか...?」
私は天守に呼ばれて信長様の前に座っていた。
「あぁ。すまない。今回も戻れそうにない。」
「そう、ですか...」
私がこうして肩を落としているのには理由があった。
それは...
恋仲の信長様が、あまり構ってくれないこと。
最近は何かと忙しい日が多く、一緒に過ごせない日々が続いていた。
(寂しい、なぁ....)
もちろん、贅沢すぎる悩みだとは分かっているけれど、やっぱり寂しい気持ちを抑えることは出来ない。
「あの、今回はどれくらいなんですか...?」
前は長くて十数日戻ってこられない日もあった。
そんなときは胸がはちきれそうになったのを今でも鮮明に覚えている。
「今回は三日程になる。」
「三日、ですか...」
三日でも私にとってはかなり大きい。
たかが三日。されど三日だ。
寂しい気持ちは蓄積していくばかりでそれを解消できることもない。
「やっぱり...寂しいです。」
こうして素直な気持ちを言ってみても。
「貴様の願いなら全て叶えてやりたいが、今回だけは耐えてくれ。必ずこの埋め合わせはする。」
こんなふうに返される。
「...分かりました。」
だから私もおとなしく諦めるしかないのだ。
「その代わり、今日は音を上げるまで抱いてやる。...来い。華。」
「...っ、はい、」
でも信長様は必ず、行く前に甘い時間を用意してくれる。
これが、せめてもの罪滅ぼしなのかと信長様は思っているのだろうか。
(確かに、信長様と過ごす時間は嬉しい。だけど....)
私は何か心に詰まるものを感じてその日も信長様に抱かれた。
翌朝。
「あれ....」
暗闇の中寒さでそっと目を開けると昨日まで愛しあった人がいなくなっているのに気づいた。
(もう行っちゃったのかな...)
なら一言くらいかけてくれたらいいのに、と思ってしまう。
でもこれは信長様が私を起こさぬようにと気遣ってくれたのだと気づくのに時間はかからなかった。
(....どうしよう、物凄く、寂しい。)
ふいに涙が溢れそうになった。
私は信長様がいないだけでこんなにもおかしくなってしまうのだと...改めて再確認した朝だった。