第34章 SAY YOU LOVE ME 『前編』❥伊達政宗
「ふふっ、目にごみが入っただけだからそんな心配し....痛っ」
再び目に鋭い痛みが走る。
それと同時にまた涙がぽろりとこぼれた。
「待て、目を見せろ。」
涙で歪んだ視界でも政宗が真っ直ぐにこちらを見つめてくれていることだけは分かる。
(っ...一応気にかけてくれるんだ、)
貴方の彼女じゃ、なくても。
そんな捻くれた考えをしてしまう自分が嫌になるもそこは大人しく政宗にされるがままになった。
するとゆっくりと私の目を触った政宗。
そして何かを引き抜くような動作をすると...
「...よし、取れたぞ」
「え?」
「もう多分大丈夫だろ、瞬きしてみろ」
「う、うん」
そう言われてぱちぱちと瞬きをするも、先程の痛みは襲ってこない。
「え!すごい!ごみ取っちゃったの?」
私が感激して聞くと。
「あぁ、これくらい余裕だよ」
にやりと笑みを浮かべた政宗が自慢気に言った。
その様子に、少し既視感を覚える。
(あれ、これ、どこかで....)
そして少し考えると、その答えはすぐに出た。
(あぁ、そっか。私がまだ一人で政宗を応援しに行ってたときの...)
この政宗の自信たっぷりの顔。
この顔だって、私の好きな顔だった。
『わあ!またシュートだね!』
私がそう叫ぶと。
『これくらい余裕だから!もっと見とけよ!』
と政宗が返す。
このやりとりが私は大好きだった。
今となっては、もう何も出来ないけど....
そこまで思ったとき、またじわりと涙が浮かぶ。
これはまたさっきとは別の涙だ。
その様子に、気づいた政宗がまた私を見つめる。
「おい、どうした?また入ったか?」
私もそれを真っ直ぐと見つめ返す。
(っ、この目から、感情が全部伝わったら良かったのにな、)
あなたが好きだということも、全部全部、伝わってしまえば良かったのに。
そうしたらまた何か、違う結果が見えたのかな...
「...おい、華?」
「!」
政宗が不意に私の名前を呼ぶ。
深く考えすぎて、逆に政宗のことを放っておいてしまったらしい。
「ううん!何でもない!それより、これですごい時間経っちゃったね!もう一限目始まるから行っていいよ!」
努めて明るい声で言う。