第32章 星空は愛の囁き❥徳川家康
華に連れられてその草むらへ行き、二人で座り込む。
(確かに二人でしか座れなさそうだな...)
そこは二人分の所しか草が抜かれておらず、他はまるで草が生え渡っている。
そのせいで、俺と華はぴったりと寄り添う形になった。
(っ、これは、かなりやばいな...)
そう思っていると。
「わあっ....!!!家康っ、見てっ...!!」
華は空を見上げて感嘆の声を上げた。
俺もそれにつられて上を見ると。
(うわ.....っ)
たくさんの星がそれぞれ自分を主張するように大きく輝いていた。
ひとつひとつの星が大きいのに、それが何万個もあるような感じでとても明るい。
(向こうでは見られないな....)
安土でも綺麗なのに、ここだと更に綺麗だ。
俺はその星たちを見つめながらもそっと隣を見ると。
(....!!!)
華がきらきらとした顔で星を見上げていた。
その大きな瞳の中には星たちが映りこんでいて。
まるで華の瞳の中に星空があるようだ。
そんな華の様子に。
(あぁ...こっちも、綺麗だ。)
なんて、柄にもなく思った。
「ねぇ、家康見てっ...え...っ、」
華はようやく星から目を離して俺の方を向く。
俺がずっと華に魅入っていたからだろうか。
何故か驚いた声を上げる。
「うん、どうしたの」
俺はその声には応えずに華に聞く。
「あ、うん、あのね、あの星あるでしょ?」
そういって華は星空に向かって指をさす。
(...?どれだ...?)
だが何万個もあるように見える星空でひとつの星を指されたとしても分からない。
「どれ?」
「あれだよ!あれ!あの赤いの!」
「赤...?どれくらいの大きさ?」
「周りよりもちょっと大きいの!」
(...わからないな...)
そう思った俺は意図せずにぐっと華に体を近づけて華が指している方向を見ようとした。
だけど。
「っ!?」
華はまたもや驚いて手を下ろした。