第30章 愛が貴方に届いたら❥明智光秀
(それにしても...)
私は自分の部屋へと帰りながら思う。
(光秀さん、私にそんなこと一言も言ってくれなかったなぁ...)
自然と顔が下に下がってしまう。
やっぱり私はまだそういう存在ではないということを突きつけられているようで少し辛かった。
だけど...
「ううん、決めたもん!」
私は顔を上げる。
(光秀さんに想いを伝えるって、散々確認したでしょ!絶対、後には引けない!)
私は何故か想いが漲ってきて早速光秀さんに思いを伝えるべく、光秀さんの部屋へと向かった。
(なんでいけると思ったんだろう、私....)
私は光秀さんの部屋の前で立ち尽くしていた。
あの時はやってやるぞ!という気持ちがあったのに、光秀さんの部屋の前につくとその気持ちがしぼんで、逆に不安が浮き出てきた。
(やっぱり拒まれたら....?冷たい言葉で退かされたら...?立ち直れるかな...)
そんな不安ばかり思ってしまう。
そんなことを考えすぎてうろうろといつまでも光秀さんの部屋の前をうろついている自分も嫌になった。
だけど、そうしていると...
「...小娘?」
中から声が聞こえた。
「!!」
その声に体が硬直する。
(っ、ここで怖気づいたら駄目だよ!)
そう思って私は平然を装って声をかける。
「はい、あの、光秀さんに言いたいことがあって...」
そう言うと光秀さんも声を返す。
「丁度いい。俺もお前に言いたいことがあった。入ってこい。」
「うん、失礼します...」
そっと襖を開けて中に入る。
中には光秀さんがひとり胡座をかいて座っていた。
「っ、あの私、光秀さんに言いたいことがあって....」
意を決してそう言うと光秀さんがにやりと口角を上げる。
「あぁ。俺もある。取り敢えず座れ。」
「は、はい」
どぎまぎしながら光秀さんの前に座る。
すると光秀さんが早速というように口を開いた。
「さあ、お前の用件を聞こうか。」
「っはい。」
私は少しだけ呼吸を整える。
そして一瞬の間で色々なことを考えた。
(このまま真っ直ぐに行くべき?ううん、それじゃ唐突過ぎて変って思われるかも....そうだ!軍議のときの話を絡めよう。)