第30章 愛が貴方に届いたら❥明智光秀
「華....」
夢の中で、光秀さんが私の名前を呼んだ。
(!光秀さんやっと呼んでくれたんだ!)
そう思って光秀さんに手を伸ばす。
だけど、光秀さんには届かない。
(どうしてっ...目の前にいるはずなのに。)
どれだけ手を伸ばしても光秀さんには届かなかった。
(っ、せっかく私の名前、呼んでくれたのにっ...)
それでも届かない手に憤りを感じて
私はそっと光秀さんの名前を呼んだ。
「光秀さんっ....」
「何だ。」
(...ん?)
やけにクリアな声が聞こえて私は違和感を覚える。
そして意識が戻ってきた目をそっと開くと光秀さんが私を覗き込んでいた。
夢なのにかなりはっきりしているその姿にまた違和感を感じる。
「あれ、夢ってこんなはっきりしてる...?」
「俺の夢を見てたのか?」
間を入れずに返してきた声にようやく意識を浮上させて瞬きをすると...
「みっ、光秀さんっ!?」
目の前に私を覗き込んでいる光秀さんの顔がしっかり見えた。
それに私は眠気なんて忘れて慌てて立ち上がる。
「な、なななんでっ...!」
すると光秀さんも立ち上がって私に向き合った。
そしてにやりと笑みを浮かべると、
「...お前を起こしに来ただけだが?」
と、私に囁いた。
「っ、みつ、ひでさん...」
こんな風でも一応私の好きな人だ。
心臓がどくどくと早まっていく。
そんな私を見た光秀さんはまたひとつ笑って私から顔を離した。
「っ、何しに来たんですか!?」
顔が赤くなっているのを隠すように私は光秀さんに問う。
すると...
「いや、本当にお前を起こしに来たんだ。」
真っ直ぐに私を見つめる光秀さん。
その様子はいつもの光秀さんなのに、何かが違う気がして私は違和感を感じる。
(どうしたんだろう、何かが変わってる...?)
何だか、もう二度と会えないような....
だけど光秀さんは私の頭にぽんと手を置いて嘘だ、起こしてすまなかった、と言うとそっと私の部屋を出ていった。
でも私は嘘をつかれたことより、光秀さんの様子が違うことに何故か危機感を抱いていた。